
株式会社キャリエーラ
代表取締役
藤井佐和子さん
大学卒業後、大手光学機器メーカーの事務職を経て、インテリジェンスにて女性の転職をサポート。現在は株式会社キャリエーラを設立し、キャリアコンサルタントとして、女性のキャリアカウンセリング、企業のダイバーシティーサポート、大学生のキャリアデザインなどに携わる。カウンセリング実績は1万2000人以上
モノを売るという営業のスキルは、キャリアにとって大きな武器です。どの国でも、どの時代でも通用します。そして現在、女性を営業職として採用する企業が増えています。企業が、女性雇用に臆さなくなってきたのは、第一期、第二期で採用された女性たちが、先駆者として確実に結果を出してきたから。一般的に男性よりコミュニケーション能力が高い、顧客を選ばないなど、様々な理由から女性は今、市場から営業職としての活躍を期待されているんです。
ところが営業職で働く女性からは、「このままハードな働き方は続けられない」「仕事に追われ将来の家庭との両立が描けない」という相談が、私のところにもよくあるんです。では本当に営業職とは、女性にとって長く続けるのは難しい仕事なのでしょうか?実際には、育児と営業を上手に両立している人や、営業を通してキャリアアップしている人も大勢います。彼女たちの働き方には、いくつかの共通点があるように思えます。
“巣作り”はただちにヤメ!
「本当にやりたいこと」のためのスキルアップに集中を
まず営業職で長く活躍し続けている女性たちには、余裕と余力があります。なぜでしょう? 彼女たちは、仕事のすべてを抱え込まないで“放す”ことを意識して、新しい時間を作り出しているのです。ところが多くの女性は、苦手な仕事であっても、責任があるからとすべて自分一人で抱え込み“巣作り”してしまいがちです。相談者の中にも、相性の合わない顧客を相手に、仕事がうまくいかず疲弊しきっているのに、それでもただ一途に「頑張ります」と仕事を手放さずにいる人がいました。でも、仕事をうまく進めていくためには、自ら担当変更を上司に相談したっていいんです。それは逃げでも責任放棄でもないんです。
人それぞれ、得意不得意があるのは当然。上司や周囲に相談し、自分の不得意なことは得意な人に任せていくことを覚えれば、もっと楽に、もっと仕事の成果を上げていけるようになります。
まじめで慎重な女性ほど、苦手分野を克服することばかりに時間を取られ、結果、全然進歩していないなんてことになりがちです。苦手なことは苦手なまま、人に任せて仕事を“放す”。その分、得意なことに時間を使っていきましょう。
次に大切なのは、やはり将来のビジョンを持つことです。27、8歳ぐらいまでは、目の前のことに一生懸命でもいいかもしれませんが、その先は「本当にやりたいこと」は何なのかをぜひ一度考えてみてください。それを判断基準に、そのために今必要なことと、必要ではないことを見分けていくと、日々の仕事にも優先順位が付けられるはずです。
スキルアップというとつい、「100点満点の自分」になるために、弱いところをすべて強化していくと考えてしまいがちですが、それは間違い。未来の自分のため、また「本当にやりたいこと」のために必要なスキルや経験を伸ばすことが大事なんです。
不得意なことをできるようになるには、時間も労力もかかります。それにかまけて、結局必要なスキルが身に付かなかった、なんてことになったら本末転倒ですよね。チャレンジしていいのは、自分の“wants”のために必要な苦手分野の克服だということを忘れないでください。
本当に「営業」は続けられない?
商品、顧客、環境でまったく変わる仕事
現在営業職を頑張っている人の中にも、「このままずっと営業を続けていくのはムリ……」と感じることがあるかもしれません。でも、本当に「営業」という仕事が続けられないのでしょうか? 例えば、売るモノや、売る相手、職場の環境が変わったら? それでも本当に続けられないでしょうか。
「もう営業はキツイ」と私のところに転職の相談に来たある女性は、営業アシスタントとしてある研修会社で働き始めたのですが、その会社の営業職の人たちの働きぶりを見ているうちに「えーい! 私の方がもっと売れる!」と営業魂に火が付いてしまって(笑)。結局、営業に異動して活躍し、収入もアップなさったんです。
営業を経験された方って、やはりこの職種に適性があるのだと思うんです。現状の忙しさなどから「営業はもうできない!」とおっしゃる方は多いですが、掘り下げてみると業務環境や別の理由で今の会社の仕事がキツイというだけで、実は「営業」という職種自体がボトルネックになっているわけじゃないケースがよく見受けられます。
企業側も高く評価する営業経験
“スタイルチェンジ”が長く活躍するためのヒント
では転職市場において、採用企業は営業経験をどう評価するのでしょう?基本的には、コミュニケーション能力が高く、数字に強くて経営的な視野で物事を捉えられることから、営業経験を持つ女性の市場価値は高いといえます。
冒頭でも述べた通り、最近女性営業職の採用を強化している企業は増加傾向にあります。もちろん営業経験を持つ女性は、経験者だけに採用される可能性も高いですから、大手企業や有名企業へ転職できるチャンスも高まっています。面接などでアピールできる華々しい実績がない場合でも、顧客との信頼関係構築など、成果を出すまでのプロセスをアピールすることで、十分に自己PRになり得ます。
ただし、営業経験は万能とは言えませんから、違う職種へとキャリアチェンジを望む場合には、将来のビジョンなど、それなりに説得力のある理由が求められます。「営業職に疲れた」という理由で事務職などへの転身を望む声もよく聞きますが、ただ営業職がイヤだからという逃げの姿勢だけで、きちんとした目的を持たないままでは企業に受け入れてはもらえません。将来のために今キャリアチェンジが必要な理由をストーリーにして語れることが大事です。
また、最終的に営業職以外の職種に進みたいとしても、まずは営業経験を武器に、望む企業へ営業職として転職する、という方法もあります。そこで成果を上げた上でなら、別の部門や職種へステップアップしていく道も拓けていきます。
最後に、営業職としての将来を考えてみましょう。
営業職はやればやっただけ実績が出せる仕事。誰かの役に立つことがうれしいという女性ならではの志向との相乗効果で、ついつい“現場主義”になりがちな仕事でもあります。
しかし現場主義を貫き、最前線で営業を続けていくには、気力・体力の限界が来てしまいます。だからこそ、発想を変えて、「後継者を育てる」ことにぜひチャレンジしてみてほしいと思います。管理職を目指す、というと大それたことのように感じる人も少なくないと思いますが、自分が楽になるために、下を育ててみると考えれば、ちょっと楽しくなりませんか?(笑)
結果的に管理職になるか否かは本人次第、会社次第。でも、そういう一つ上の目線で仕事をすることは、きっと自分自身のスキルアップや社内評価の向上につながっていきます。自分らしい将来のキャリアや、家庭と仕事を両立できるワークスタイルの発見にもつながるかもしれませんよ。